カエルのナミダ
その昔、カエルは人間で言うところの巫女の役割があった。
天気を占う巫女で、雨ごいをしていた。
道を横切って、その身が無事なら晴れ。
悲しいことに事故や子どもたちに見つかるなど、不運に見舞われたら雨。
雨ごいなので、結果的に誰かが犠牲になる。
そんなときは、仲間が弔いの鳴き声をあげて、その命を、涙を流して悲しんでいた。
あるとき、一匹のカエルは考えた。
仲間が亡くなっていくのを、もうこれ以上見たくない。
人間の世界では、笑うから楽しくなるという考えがあるらしい。
だったら、運に身を任せて雨ごいをするより、カエル(巫女)であるボクらが先に鳴いて雨を降らせることができるんじゃないか?
そう考えたカエルは、仲間のカエルにその考えを説いてまわりました。
仲間が亡くなるのを、もうこれ以上みたくないという思いは、みんな同じでした。
だから、みんなは、この考えを信じて、信じて、信じて、思いっきり鳴きました。
涙が流れるくらい。
懸命に泣き続けていると、晴れわたった青空に段々と雲が増えてきました。
カエルたちは喉を涸らしながらも鳴くことをやめませんでした。
この土地に雨の恵みを得るのは、ボクたちの大切な仕事。
でもこれ以上、仲間を失いたくない。
ずっと、ずっと、あきらめずに泣き続きていると、ぽつっと一粒、空から雫が、、、。
その雫は、次第に多くなり、気がつけば、雨になっていました。
ザー。ザー。ザー。
カエルたちは、とうとう仲間の命を犠牲にせず、大地に雨をもたらす使命を果たしたのです。
カエルたちの声は、ガラガラになっていました。
喉が痛くて、痛くてたまらないはずなのですが、仲間を失わなかった嬉しさで、ずっと、ずっと鳴き続けたのです。
鳴けは助かる。仲間を助けられる。
雨は、私たち人間が食べる作物をぐんぐん育ててくれます。
私たちが、おいしいものを食べられるのもカエルたちのおかげかもしれませんね。
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