仏さまの宝物(改訂版)

 昔、サンタクロースが日本の子供たちにも

プレゼントを届けてくれるようになった頃のお話しです。


雪がシンシンと降る、寒い寒いとあるクリスマスイブ。

サンタさんは、仏さまのところに挨拶に行きました。

仏さまは、パンチパーマのようなチリチリの髪型で、

ゆったりとした服を着ていて裸足でしたが

そのお姿は金色に輝いていました。

「はじめまして、仏さま。日本の子供たちもよい子だと聞きましたから、

今年からプレゼントを配ろうとやってきましたよ。」

「それはそれは、ありがとう。

本当によい子たちばかりですから、よろしくお願いしますね。

子供たちも、さぞかし喜ぶことでしょう。」

「はい。それでは、いってきます。」

そういってサンタさんはプレゼントを配りに出かけました。

仏さまは、その後ろ姿を見送りながら、無事配り終えることを祈りました。

お寺の境内には、また静けさが。

去年までと違うところは、雪の上のサンタさんのブーツの跡。

仏さまはしばらく、そのブーツの跡を眺めていました。


 次の年のクリスマスイブ、サンタさんは先にプレゼントを配り終えてから、

仏さまのもとを訪ねました。

「やあ、サンタさん。一年ぶりですね。」

仏さまはそう言ってサンタさんを温かく迎えました。

サンタさんは、よっこいしょと腰を下ろして、

今日プレゼントを配ってきた子供たちのことを色々と仏さまにお話ししました。


 楽しい時間は、あっという間に過ぎてサンタさんが帰る時間に。

サンタさんは立ち上がると、袋から1つの包みを仏さまに差し出し

「はい、これは仏さまへのプレゼントですよ。それじゃあ、また来年。」

と言って帰っていきました。

「何でしょう?」と

仏さまは、サンタさんのくれた包みを開けてみました。

箱の中には、ふわふわのボアのついた1足のブーツ。

サンタさんとおそろいの赤いブーツです。

「サンタさんは気づいていたのかな?」

はじめてサンタさんに会ったとき、仏さまはサンタさんのブーツがあったかそうで、

ちょっとうらやましかったのです。

仏さまはブーツを履いてみました。

「あったかい。」

このブーツは、仏さまの宝物になりました。


 毎年のクリスマス、みんなが寝静まった後、ブーツを履いて、

仏さまは仕事終わりにやってくるサンタさんを待っています。

そして朝、みんなが起きるまでのおしゃべりが、

ふたりの、誰にも内緒の楽しみとなりました。

                

おしまい

yellow9.

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